法のくすり箱
Q、先日、突然、裁判所から差押命令が届きました。驚いて、届けられた差押命令書を読んでみると、どうも私が家主さんに支払っている家賃を差し押さえたということのようでした。どうすればよいのかと迷っていると、今日、家主さんのほうから家賃を自分の銀行口座に振り込むようにとの指示書が送られてきました。今までどおり家主さんに家賃を支払ってよいものでしょうか?
A、おそらく家主さんはどこかからお金を借りていてその返済をしないなどのために、あなたの家賃(賃料債権)が差し押さえられたのでしょう。バブル経済の崩壊によって金融機関も不良債権の整理を余儀なくされ、今までなら見向きもしなかった賃料債権まで差押えをする例が増加しているようです。
そこでまず、裁判所から送られてきた書類を見てください。その中の「当事者目録」という書類に、差押命令の当事者として、債権者・債務者・第三債務者の記載があり、債務者は家主、第三債務者はあなたの名前となっているはずです。また多くの場合、書類のなかに「催告書」と「陳述書」があるはずです。これはあなたが支払っている家賃の内容や今後の支払意思などについて確認するためのものですから、添付されている説明書にしたがって必要事項を記入して裁判所に返送してください(わからないことがあれば裁判所へ電話して確認してください)。
さて、差押命令があなたに送達されると、以後、あなたは家主に家賃を支払ってはいけないことになります(二重払の危険)。そこで家賃を支払わないでいるとしましょう。おそらくまもなく差押えをした金融機関など(債権者)が、直接に、または裁判所の手続きを通じて、自分へ支払うようにいってくるはずです。この段階で支払っても遅くありません。
しかし1ヶ月以上たっても債権者から何もいってこないようでしたら、近くの法務局の所在を確かめてそこへ家賃を供託するようにしてください。あなたとしては賃料不払いによる債務不履行責任を問われないようにする必要があるからです。
もっとも、このような家主には他にも借財があって、別の金融機関からも差押命令が送られてくることが考えられます。このようなときにはいずれの金融機関(債権者)にも支払ってはならず、右の法務局への供託だけが正解ですのでご留意下さい。
<供託>
相手方が、1弁済のための金銭の受領を拒否する場合、2所在不明等のため受取ってもらうことができない場合、3誰に債務を弁済すればよいのかわからない場合に、債務の目的物(金銭・有価証券・その他の物品)を供託所(各地の法務局にあり、通常供託課という名前がついている)に寄託することによって支払い等の債務を免れることができる。一般にこれを供託という。
供託には上のような弁済の代用に行われるもののほか、後の支払い(たとえば裁判で決着がついた後の支払い)を確保するための担保としてする場合や、商法などの規定に基づき傷みやすいものを金銭にかえて保管するためにも用いられる。
弁済の代用の供託をした場合には、これによって供託者は支払義務を免れ、供託を受けた者は供託所に供託物の交付を請求する権利(供託物還付請求権)を取得する。供託を受けた者が還付してもらうまでの間は、供託者は供託を撤回して供託金を取り戻すことができる。この取戻がなさると供託はしなかったものとみなされる。

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