法のくすり箱
Q、これまでわが家の周りにはへいがなかったのですが、隣りに新しく家が建ったので隣家との境界線上にへいを作りたいと申し出たところ、「うちはこのままでいいから作るなら勝手にどうぞ。ただし、費用はいっさい出さない」と言われました。ほんとうに私の方で全額負担しなければならないのですか?
A、所有者の違う隣りあったふたつの建物の間には、双方の共同で境界線上にへいを作ることができます(民法225条1項)。設置費用は原則として折半です(226条)。へいの材料や高さについては、まず双方が話し合って決めることになっていますが、話し合いがつかない場合には、板べいか竹垣で高さ2メートルのものにするように定められています(225条2項)。ただし、これが定められた明治29年当時は工事費や材料費から考えて板や竹が適当だったのでしょうが、現在ではブロックが一般的ですのでブロックべいにするのが適当(228条の慣習に該当)と考えられます。
どちらか一方が、もっとよい材料を使いたい、もっと高さを高くしたい、豪華なものを作りたいと希望するならそのとおりにできますが、費用がかさむ分についてはそうしたいという者が負担しなければなりません(227条)。
これらの原則にはいくつかの例外があります。住宅の密集した地域で隣家との間が非常に狭いのでへいは作らない、家と家の間を通路として利用しているのでへいを作ると困る、などその地方の慣習がある場合にはそれに従わなければなりません(228条)。また、必要以上に高いへいを作って隣人の日照や通風を妨げるようなことは認められませんし、市町村の条例や建築協定でへいは生垣にすることと定められているような場合もそれに従わねばなりません。
それでは、あなたのように隣家がへいを作ることに同意しないときや費用の負担に応じないときはどうすればいのでしょうか。いくら法的には境界線上にへいを作ることができることになっているとはいえ、やはり隣家の承諾なしに実力行使することはできません。どうしても隣家との話合いがつかないときには、まず裁判所に調停を起こして調停委員や裁判官に説得してもらい、合意をとりつけるべきでしょう。それでもだめなら、裁判によって隣家の人に対してへいの位置・材料・高さなどを指定して、へいの設置を命じる判決をもらわなければなりません。
また、双方の合意で作ったへいは双方の共有物となり(229条)、管理は共同で行い(252条)、地震や水害で壊れたときには修理費用を分担することになっています(253条)が、後になってトラブルが生じないようにこういったことについても事前にとり決めておく必要があるでしょう。
なお、自分の敷地内なら隣家とは関係なくへいを作ることができます。この場合費用は全額自分で負担します。ただし、いくら自由に作れるといっても、不必要に高いへいを作って日照妨害するようなことはもちろん許されません。
いずれにしても、隣家とは今後もずっとつき合っていかなければならないのですから、十分に話し合ってなるべく円満に解決したいものです。

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