
法のくすり箱
Q、父が死亡し、遺産分割をしたいのですが、末の弟が外国へ行ったまま行方不明でもう5年になります。遺産を法定相続分どおり、母2分の1、残りを兄弟3人で分けようと思いますが、弟不在のまま私たちだけで協議して分けてしまってもよいのでしょうか?
A、行方不明の弟さんを抜きで、3人だけで遺産分割の協議をすすめることは許されません。たとえ弟さんに財産を分け与えたとしても無効となります。
このような場合は、共同相続人(あなたの場合は、あなた自身・母親・兄弟の誰か)が利害関係人として家庭裁判所に不在者財産管理人の選任の申立てをし、適当な人(遺産に利害関係をもたない人)を弟さんの財産管理人として選任してもらいます(民法25条)。そして、この管理人とあなた方とで遺産分割の協議をすればよいわけですが、管理人の権限には制限があります。すなわち、不在者のための財産の保存行為(家屋の修繕・税金の納入など)や利用改良行為(家屋の賃貸・田地の宅地化など)は認められていますが(民法28条・103条)、財産を処分する権限までは認められていません。よって、遺産分割は一種の処分行為と考えられるので、管理人は家庭裁判所に許可を得ておく必要があります(民法28条)。そして、以上の手続きを踏んだ後、管理人とあなた方とで遺産分割の協議をすすめることができます。
また、もう1つの方法として、家庭裁判所に遺産を分割してほしいと申し立てて、調停または審判の手続きによって分割してもらう方法もあります(民法907条2項)。
いずれの方法にせよ、分割後、弟さんが出現しても、その内容については文句をいえないことになっています。

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