塩、自由化へ!!

安価で安全な塩の安定供給を

塩専売法の廃止→塩事業法の制定
平成9年4月1日スタート



貴重で、しかも不可欠な塩



 調味料としての塩、漬物や歯磨きなど殺菌効果と防腐作用を利用する塩、美顔や美肌のエステの塩、そして化学工業の触媒としての塩──塩は、生命の維持に必要不可欠な最も大切なものであると同時に、広くさまざまなところで活用されています。
 まわりを海で囲まれた島国である日本では、この塩の自給率はいったいどのくらいでしょう。平成7年度の実績で、生活用塩(家庭用・飲食店用)は33万トン、業務用塩(食品工業用)は157万トン、そしてソーダ工業用塩は748万トンと、合計で約940万トンの需要があるのに、国内産の塩はわずか15%しかありません。工業用の塩は全量輸入に頼っているのが実情です。
 じつは、日本は世界の中でも塩の自給率がきわめて低い国のひとつなのです。天然資源としての岩塩もとれず、世界的にみて多雨な地域にあるため天日での製塩も容易ではない──そのため、古くからの塩田製塩法に変わって、昭和46年からはイオン交換膜製塩法(工場の中でつくられる塩。海水から濃い塩水を抜き出して蒸発装置で煮詰める)で国内塩は100%製造されています。

90年にわたる塩専売制の廃止


 この大切な塩は、90年間の長きにわたり、国による専売制度がとられてきました。当初(明治38年)は日露戦争の戦費を捻出するために、そして大正8年以降は塩の需給と価格安定をめざして国内塩産業を育成するための“公益専売”へと変わりました。さらに、第二次世界大戦後は日本専売公社が、そして昭和60年以降は日本たばこ産業株式会社(JT)が国の委託を受けてこの塩の専売事業を行っています。
 国鉄や電電公社・専売公社の民営化が行われ、最後に残ったこの塩についても、いよいよこの4月1日をもって、専売制度が廃止されることとなりました。従来の「塩専売法」が廃止され、これに代わって新たに「塩事業法」が施行されます。
 これまでの専売制度のもとでは、塩の製造・輸入・卸・小売りのすべての段階でJTによる指定や委託を受ける必要がありました。またJTによる塩の買入価格や卸への売渡価格、そして販売上限価格も、すべて大蔵大臣の認可を得て公告されるなど、徹底したきびしい管理によって、塩の安価で安定的な供給が確保されていたわけです。

塩の流通大幅自由化同時に塩の安定供給を


 これに対して新法のもとでは、塩の製造・輸入・卸売りについて、大蔵大臣の登録制へと緩和されました(法5・16・19条。実務上は、製造・卸売りは財務局長へ、輸入は税関長へ委任、令5条)。さらに、医薬品や医薬部外品・化粧品としての塩、試薬、学術研究用の塩、メッキの触媒としての塩など「特殊用塩」とよばれるもの(規則4条)と、平釜式や温泉熱利用式などイオン交換膜方式とは異なる特別な製法で製造した塩、香辛料やにがり・ごま・こんぶ等を混入した塩など「特殊製法塩」(規則5条)のみを製造する場合には、届出だけでよいことになっています(法15条)。そしてこうした特殊用塩と特殊製法塩のみを扱うなら、卸売りは自由に営業できます。また輸入についても、特殊用塩のみを輸入する場合には、届出だけでよいこととなりました(法18条)。
 このように、流通の全過程が大幅に自由化され、価格の規制も取り払われたとはいえ、塩のもつ商品としての特殊性そのものに変わりはありません。そのため、非常時の対策や、安価で良質の塩を僻地や過疎地をとわず常に供給する体制を確保する必要があります。
 そのため、大蔵大臣は、毎年度ごとに、塩の需給見通しをたててこれを公表しなければなりません(法3条)。そしてこれを実行性あるものとするために、新たに「財団法人塩事業センター」が設立され、生活用塩の供給と塩の備蓄、そして緊急時の対応に取り組むことになりました(法21・22条)。生活用塩(家庭用及び飲食店等の生業用の塩)については、センターと販売店契約をした店を通じて確実安価に塩を提供できるようにしたものです(法23条)。
 なお、5年後の平成14年3月31日までは経過措置として、塩事業センターで業務用塩も取り扱うことになっていますし、塩製造業者は塩事業センターまたは登録した卸売業者にのみ塩を販売すること、など所要の措置がとられています(法附則37・41条)。
*  *  *

 こうした措置によって、塩の専売制度の廃止にともなって家庭用塩が大きな変化を受けることはなく、塩の価格や販売は従来どおり安定的に確保されることになりそうです。また、これまでもカルシウムやにがりを入れるなど加工した塩(特殊用塩)は800種類以上が売られてきましたが、これらは現実にはそのほとんどが専売の塩やオーストラリアなどから輸入した塩に、メーカーがにがりなどを添加して「自然塩」として販売していたものです。この改正により、特殊製法の塩を届出により製造できることになり、昔ながらの海水塩田法によるミネラル豊富な塩が登場するかもしれません(もっとも、食塩の摂取量は微々たるものですから、食塩からミネラルの供給を期待するのは無理というものです。念のため)。 




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