(これは平成5年8月1日に施行された暴対法の改正について「そよ風」68号に掲載されたものに加筆したものです)

新たに禁止!!
密接関係者(親など)の威迫
「指詰め」と「入れ墨」
暴力行為の現場助勢…

暴力団対策法の一部改正  平成5年8月1日施行

 いわゆる暴力団新法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)が平成4年3月1日に施行されましたが(そよ風57号参照)、この法律の対象となる暴力団(指定暴力団)が、平成5年の8月までに、山口組・稲川会・住吉会・極東会など22団体指定されています。その結果、全国の暴力団の構成員約5万7000人のうちの約80%が右の指定暴力団の構成員(指定暴力団員)に該当するに至り、この法律による規制の対象とされています。
 この法律は、@指定暴力団員による用心棒料・みかじめ料の要求などの不当な金品要求行為(暴力的要求行為)や、A暴力団への加入強要等の行為を禁止し、Bこ れらの禁止に違反する行為があった場合には公安委員会がその中止を命じ(一定の命令は警察署長が行う)、C対立抗争が発生した場合には公安委員会が暴力団の事務所の使用制限の措置を講ずる、という仕組みになっています。暴力団対策法施行1年の状況をふまえ、平成5年8月より、さらに次のような改正を行うことにより制度の充実をはかりました。

本人の親や上司などへの威迫による加入強要等の禁止

 指定暴力団員が暴力団への加入を強要したり暴力団からの脱退を妨害するために本人を威迫することは従来から禁じられていましたが、平成5年8月の改正により、本人と密接な関係を有する者(本人の親族・職場の上司・学校の教師・保護司など)に対し、@組抜け料の支払いを要求したり、A本人に連絡をとるようにとの伝達を強要したり、B本人の所在その他の情報を提供するよう強要するなどの威迫行為をすべて禁止しました(16条3項)。この違反に対して公安委員会は中止命令を出し(18条1項、警察署長への委任42条3項)、従わないもの には1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する(46条)ことになりました(後述の各種の禁止違反への措置もこれとほぼ同じです)。
 また指定暴力団員が、@自分の配下の暴力団員に命じて右の加入強要・脱退妨害等の行為をしたり、A配下の団員がこれらの行為をし ようとしているのを禁止せずに助長したりすることも併せて禁止することにしました(17条1項)。さらに指定暴力団員が、他の指定暴力団員に対して加入の強要等の行為を依頼したり、そそのかしたり、助けたりすることも禁止し、加入の強要等の規制を強化しています(17条2項)。

暴力団からの離脱を妨げる行為(指詰め・入れ墨)の禁止

 指定暴力団の団員が暴力団から足を洗って脱退したいと考えたときに、脱退時のけじめとして小指をつめるように要求されると、それは、本人にとって、親から貰った身体の傷害にとどまらず、社会復帰上の重いハンディキャップとなります。また入れ墨も回復困難な身体的特徴を生ぜしめる行為であり、暴力団からの離脱や社会復帰への阻害要因となるものです。ただし、入れ墨は、暴力団以外にも伝統的に芸術として行われている一面があり、その不当性も指詰めほどには強くないため、平成5年8月の改正では、環境の影響を受けやすく無思慮に入れ墨を入れやすい少年の入れ墨を禁止の対象にしました。すなわち、指定暴力団員による指詰めの強要・勧誘・補助等が禁止され、また、指定暴力団員が少年に入れ墨を施したり強要したりすること等が禁止されることになりました(20〜26条)。

暴力団からの離脱者の杜会復帰の促進

 暴力団から離脱した者に対しては健全な社会の一員に復させるための方策が必要です。現にいくつかの府県においては社会復帰対策の協議会(たとえば神奈川県暴力団離脱者社会復帰対策協議会・兵庫県暴力団離脱者就労対策協議会・大阪府暴力団離脱者支援対策連絡会など)が発足しています。そこで法律上も、公安委員会が、暴力団からの離脱を希望する者その他関係者を対象として、離脱者の就労の円滑化、脱退妨害行為の予防、暴力団からの離脱と社会経済活動への参加を確保するための必要な措置を講ずるとともに、離脱者の就業に対する援護に関する思想を普及するための啓発を行うこととしました(28条)。

暴力的要求行為を現場で助ける行為も規制

 これまで、因縁をつけて金品等を要求する行為、高利債権取立行為、用心棒料等要求行為などの暴力的要求行為を行うこと並びにそのような行為をするように要求する行為を規制していましたが(9条、10条1項)、さらに、暴力的要求行為の現場に立ち会って助ける行為をも禁止することとしました(10条2項)。
 「立ち合い」「助ける」行為は、指定暴力団員が行う場合に限らず、何人が行う場合も規制されます。もっとも、指定暴力団員に脅されて外見からみれば違反行為をしている場合や、たまたまその場に居合わせて面白半分に「もっとやれ」等の野次をとばす場合など 微妙なケースも考えられ、一般人に対しては認定や中止命令の運用の慎重さが望まれます。
 なお、平成5年8月の改正を機会に、暴力的要求行為の新しい行為類型として、競売物件の支配・関与にかこつけて金品を要求して競売を妨害する行為、証券取引による損失補償を証券会社に要求する行為、不当に会社に対して自己株式の買取を要求する行為などを規制する規定を新設しました(9条9・10・12・14号)。




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