これは、商法が大幅に改正された、平成3年4月1日号(第52号)に掲載された記事です。今回の法のくすり箱「まだ間に合う!最低資本金制度への対応」の参考にご覧下さい。

株式会社設立には資本金1000万円必要!
ただし発起人は1人でもOK

商法等の一部を改正する法律
平成3年4月1日施行

 平成3年4月1日から、株式会社の資本金の最低額の設定・一人会社設立の許容等を内容とする「商法等の一部を改正する法律」が施行されました。昭和57年10月1日に、総会屋の締め出し・一株標準額を5万円とする等の改正が施行されましたが、このたびの改正は前回の改正で積残した問題に取り組んだ9年ぶりの大改正となりました。

小規模会社に適合する法整備を行う


 わが国では、法人成り(ほうじんなり)といって、家族や親族経営の小さな事業体までが会社組織になることが盛んに行われています。会社にしてしまえば、個人とちがって永続性があり、信用の維持や相続・死亡の問題等にメリットがあるからです。
 しかも、こうした小規模でもともと閉鎖的な企業が法人成りする場合でも、株式会社の形態を選択することが多く、その結果、わが国の株式会社の大半は、これらの会社(閉鎖会社と呼ばれています)で占められています。本来、株式会社は「株」という形をとって多数の人から多額の資金を集めて営業する団体であり比較的大きな企業を想定していることから考えれば、おかしな現象といえましょう。
 このため、現実の株式会社と商法で定める法律上の株式会社の間のギャップが広がり、法の形骸化が進んでいました。このギャップの解消も今回の改正の目的のひとつです。

一人でも株式会社を作れます


 平成3年の改正で、発起人が一人、したがって株主が始めから一人だけの株式会社の設立が認められることになりました。
 以前は、株式会社を設立するためには7人以上の発起人が必要であるとされていました。しかし、名前だけを借りて発起人になってもらう場合が少なくなく、それに伴って名目だけの株主が存在することが多くなっていました。またこれまででも、いったん株式会社が成立した後は、株主が7人未満となり、さらに1人だけとなっても会社は解散せず一人会社(いちにんがいしゃ)という形でも存在することが認められています。こうした一人会社という形は、親会社に全株式を所有されている会社(子会社)のような場合にもしばしばみられるところです。
 これらにかんがみ、改正後は発起人の員数の下限についての定めをとりのぞき、よって一人会社の設立を許容することになりました(商法165条)。株式会社は、多数の株主から多額の資金を集めるということ以外に、株主の有限責任(会社の債務について、出資の範囲で責任を負えばよく、個人の財産まで提供しなくてよい)によって、一定の財産を他の財産から分離して管理する技術である、という面ももっており、一人会社は、株式会社制度をこの面に利用するものであるといえましょう。

新株は株主に割当てます(譲渡制限会社の場合)


 小規模の閉鎖的な会社では、当然のことながら少人数である株主の間で誰が会社運営のパートナーであるかが重要視されることになります。これに加えてそれぞれの持株割合も、経営への発言権の大きさ・影響力となり、また重大な関心事となります。
 そこで、本来、株式会社の株式は他人に自由に譲渡できるのが原則ですが、昭和41年の商法改正で、定款によって「取締役会の承認を受けなければ譲渡できない」と定めることが認められています(株式譲渡制限の制度、204条1項但書)。
 その結果、昭和41年以降は、設立当初から定款に譲渡制限規定を設けるものが多くなり、最近では、新設会社のほぼ100パーセントが譲渡制限会社となっています。(この規定がある限り、証券取引所で上場されることはありませんし、証券会社の店頭登録も認められていませんから、会社が順調に発展し大きくなっていく過程で、株式の公開を準備するために、この譲渡制限規定をはずすことになります)
 このような譲渡制限を定めた会社にあっては、持株比率を維持することが、経営への発言力の大きさを確保することとなり、株主にとって非常に重要となりますから、株の増資に際してこの持株比率が変わるようなことがあっては大変です。譲渡制限のため、株式市場で自由に株を買うこともできず、失った持株割合を回復することができないからです。
 そこで平成3年の改正で、増資は、原則として株主割当増資をする(株主に新株引受権を与える)べきことを法定しました。ただし株主総会の特別決議(株式総数の過半数の出席の下で3分の2以上の賛成)を経れば、第三者割当増資も選択できるものとして、会社資金調達の柔軟性に配慮しています(280条の5の2)。

資本金は1000万円以上必要です


 こうした小規模会社のための法改正の一方で、会社債権者の保護のための改正も行われました。無責任に株式会社を作り、株主は有限責任なのをいいことに多額の負債を抱えて安易に倒産するようなことがあってはなりません。そこで株式会社の設立に際して、資本金に最低ラインが設けられました。
 平成3年までは、株式会社を設立するにあたっての資本金は、理論上わずか35万円で足りていました(1株標準額5万円 ×発起人が最低7人)。しかし、株式会社の財産を確保するための基準金額として金35万円也は、現在の貨幣価値からみてもあまりに低いといわざるをえません。
 そこで、株式会社の資本金は最低でも1000万円が必要とされることになりました(166条の4)。ちなみに外国における株式会社の最低資本金は、ドイツで10万マルク(約950万円)、フランスは公募会社で150万フラン(約4200万円)、非公募会社では25万フラン(約700万円)となっています。また、ヨーロッパ共同体(EC)はその指令により最低資本額として2万5000ECU(現在の換算率で約500万円)を要求しています(アメリカでは若干の州をのぞき、最低資本金の定めを設けていません)。
 平成3年4月1日からは、資本金が1000万円末満の株式会社の新設は無効となります。他方、それ以前に設立されていた既存の会社についても、資本金が1000万円未満のものは改正法で経過措置が設けられ、改正法の施行後5年以内(平成8年4月1日まで)に、@資本金を1000万円以上とする、A株主総会の決議を経て、合名会社・合資会社・有限会社(最低資本金は300万円)のいずれかに組織変更する、上の@・Aのいずれかを選ばなければならないことになりました。
 上の5年間の猶予期間が満了したときに資本金の額が1000万円に満たない株式会社は2ヶ月後に解散したものとみなされることになります。
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 平成3年の商法等の改正では、このほかに会社の資金調達の合理化のために優先株制度や社債発行についても改正が行われています。しかしこれら改正は、いずれも昭和49年以降約20年間にわたり続けられてきた会社に関する法律を全面的に整備する作業の、未だ中間段階に位置づけられるものです。



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