<DV防止法は,保護命令制度が,平成20年の改正でさらに大幅に拡充され,現在では親族等の保護もはかられています。くわしくはそよ風151号をご参照ください。>



裁判所の保護命令がさらに充実
子供・元妻にも対象拡大
退去命令期間2ヶ月に延長
DV防止法の改正〜H12.12.2施行〜


DV(ドメスティック・バイオレンス)防止
  ――密室の暴力からの解放をめざして


 平成13年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」(DV防止法そよ風113号参照)が制定され、これまで単なる夫婦喧嘩と見られがちだった家庭内での暴力に初めて法の光が当てられました。「DVは犯罪である」という認識は広がりつつあります。実際、本法に基づいて全国に設置された配偶者暴力相談支援センターには、平成14年度からの2年間で約8万件もの相談が寄せられました。
 しかし、同法には、あくまで暴力から一時的に逃れる保護にとどまっている、その保護にも多くの抜け穴があるなどと批判があり、やっとの思いで声をあげたDV被害者たちは、十分に救われているとはいえませんでした。そこで、同法の改正が行われ、DV対策が強化されることとなりました(平成16年12月2日施行)。

「精神的暴力」や「性的暴力」にも法規制を拡大

こんな行為はDVです!!
身体的なもの * 平手で打つ
* 足で蹴る
* 体を傷つける可能性のある物で殴る
* 髪をひっぱる
* 首をしめる
* 引きずり回す
* 刃物など凶器を体につきつける
精神的なもの * 大声でどなる
* 何を言っても無視して口をきかない
* 実家や友人とのつきあいを制限する
* 大切な物を壊したり捨てたりする
* 生活費を渡さない
* 殴るそぶりや物を投げつけるふりをして脅す
* 子どもに危害を加えると言って脅す
性的なもの * 見たくないポルノビデオや雑誌を見せる
* 嫌がっているのに性行為を強要する
* 中絶を強要する
* 避妊に協力しない
 身体的な暴力は刑法上の傷害罪や暴行罪として処罰の対象になり,
精神的な暴力・性的な暴力もPTSD(外傷後ストレス障害)など
重い精神障害に至れば刑法上の傷害罪として処罰されることもある。
 まず、旧法では、問題とされる配偶者からの「暴力」とは、「身体に対する不法な攻撃で、生命又は身体に危害をおよぼすもの」に限られていました。このため、暴言を吐く、無視する、殴るそぶりや物を投げつける振りをして脅すなどの「精神的暴力」や、性行為や中絶を強要する、ポルノビデオを無理矢理みせるなどといった「性的暴力」については法規制がされず、ただ、配偶者暴力相談支援センターにおいて相談・保護の対象とされるだけでした。
 そこで、今改正では、新たに、身体的暴力に準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をも「暴力」として明記し(1条)、改めて、精神的暴力や性的暴力も法の対象としました。

子への接近禁止の導入
    ・退去命令2ヶ月に延長

 DV法では、「保護命令制度」といって、裁判所が被害者の申立てにより、重大な危害を加える恐れのある配偶者等(内縁関係を含む)に対し、(1)接近禁止命令(2)住居退去命令を発することができます。
 この制度について、今改正では次のような拡充措置がなされました(なお、この制度では身体に対する暴力のみを保護の対象とします)。

(1) 子へも接近禁止命令
従来は被害者本人に対する6ヶ月の接近禁止命令しか認められていなかったため、加害者が子供を連れ去り、子供を盾に本人の連れ戻しをはかるなどのケースが多々ありました。
そこで、子供を連れ去る疑いのある場合等は、被害者への接近禁止命令とあわせて被害者と同居している未成年の子(ただし、15歳以上ならば子の同意が必要)への接近禁止命令が認められることとなりました(10条2項)。しかし、強く要望されていた、被害者の親族や支援者に対する接近禁止命令は今改正では見送られています。
(2) 退去命令の拡大
住居からの退去命令については、従来の2週間という期間では身辺整理や転居先の確保等をするには短すぎることから、2ヶ月に拡大されています(10条1項2号)。その際、加害者は、住居を退去するだけでなく、その付近を徘徊することも禁じられました。また、期間中に被害者がやむなく転居を完了することができなかった場合など、必要な事情があれば、申立により再度の退去命令を発することも可能です(18条1項)。

<保護命令制度は,平成20年の改正でさらに大幅に拡充され,現在では親族等の保護もはかられています。くわしくはそよ風151号をご参照ください。>

離婚した元夫・妻も保護命令の対象に

 ところで、これら保護命令の相手方は配偶者等に限られていたため、加害者の恨みが募ってもっとも危険な時期とされる離婚直後に被害者を守ることができませんでした。そこで、元配偶者からの暴力によって離婚後も引き続き生命・身体に重大な被害を受ける恐れが大きい場合には、離婚した元夫・妻にも保護命令を発することが可能となりました(10条1項)。
 また、従来は、保護命令の再度の申立てをする場合、さらなる暴力により生命または身体に重大な危害を受ける恐れがある旨の記載をした公正証書が必要とされていました。今改正で、こうした事情を配偶者暴力相談支援センターや警察に相談し、その内容を申立書に記載すれば、この公正証書は不要となりました(12条)。

地域差をなくす――足並みそろえてDV施策

 DV防止をめぐる対応は、残念ながら、自治体によって大きな格差が指摘されています。各自治体は、DV施策の水準をあわせ、全国的に同法の目的が実現されるよう努力しなければなりません。
 そこで、国がDV対策についての基本方針を定め、これに基づいて、各都道府県がさらに地域の実情に応じた具体的な独自の基本計画を策定することとしました(2条の2・2条の3)。改正法が施行された平成16年12月2日、この基本方針がすでに告示されています(「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策に関する基本的な方針」)。その中では、被害者の転居先が突き止められることのないよう、加害者等による住民基本台帳の閲覧を制限する規定や、被害者の自立を支援するため、職業訓練や自治体による住宅確保をはかる経済的な自立のための施策なども具体的に盛り込まれています。

配偶者暴力相談支援センターを市町村にも設置

配偶者暴力支援センターにおける
性別相談件数(平成16年)
4月5月6月7月8月9月
女 性3,7023,6314,4564,3784,2874,238
男 性1827232527
合 計3,7083,6494,4834,4014,3124,265
 配偶者暴力相談支援センターは、各都道府県で、婦人相談所等において活動し、DVについての相談・指導・一時保護・情報提供など、被害者への援助の中心的役割を果たしています。
 これを、市民により身近な窓口として機能させるため、市町村においても設置することとしました(3条2項)。また、活動内容に、被害者の自立のための就業の促進や住宅の確保、さらに、関係機関との連絡調整を行うことが、その業務として規定されました(3条3項)。とくに、民間団体との連携に努めることが強調されています(3条5項)。一時保護施設や専門の職員等は、公的機関が質的にも量的にも不十分であるため、民間団体の果たす役割は非常に重要といえましょう。
 その他、警察は、身体的暴力を受けているDV被害者からの申出があれば、自衛策や対応策などを指導したり、被害を未然に防ぐために必要な援助を行うなどの役割を果たすことも定められました(8条の2)。
*       *       *

 今法は、施行状況を踏まえ、さらに3年後を目処に見直すこととされました(附則3条)。今後は、加害者の更生のための施策を含めたさらなる検討が望まれます。
 もし自分が被害者となってしまったら、一人で悩まずに一刻も早くお近くの相談窓口をたずねてみましょう。

内閣府 配偶者からの暴力被害者支援情報ホームページ
http://www.gender.go.jp/e-vaw/index.htm




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