児童虐待かな?と思ったら迷わず通告を!!
児童虐待防止法の改正

許さない!児童買春・児童ポルノを厳罰化
児童買春禁止法の改正



 児童をめぐる痛ましい事件が後を絶ちません。目をふさぎ、耳を覆いたくなるような悲痛な虐待事件が連日のように報道されています。核家族化、地域社会とのかかわりが薄れた閉鎖的な育児環境、あるいは経済的な困窮で親が追い詰められた等々、さまざまな要因があげられています。しかし、たとえどんな事情であれ、次代を担うべき子どもたちの明るい未来を奪う行為が許されていい理由などひとつも存在しないのです。

児童虐待防止法――4年ぶりの改正

 本来、児童(18歳未満)は「児童福祉法」で保護されています。
 さらに平成12年には、児童虐待の相談件数が増加したことを背景に、「児童虐待の防止等に関する法律」も制定されました(くわしくはそよ風108号参照)。
 この法律は、まず何より、子どもの命と人権を守ることを第一に優先させ、断じて児童の虐待を許さないという考えの上に制定されたものです。たとえ親などの保護者であっても、たとえしつけ名目であっても、児童を虐待してはならないとして、何が虐待にあたるかを明確に定義し、さらに、早期発見・通告が児童虐待防止の第一歩であり、まず駆けつけて立入調査し、必要な措置につなげることが定められています。
 それでも、なお、悲惨な事件をくい止めることはできない現実がありました。そして同法は、今回、主に次のような点が改正されました(平成16年10月1日施行)。

“虐待”の確信はなくとも……躊躇なく通告を!

 通告は、被害者である子はもちろん加害者である親をも救う最初の情報発信者といえます。しかし、ともすれば「虐待との確信がない」「お節介かも」と躊躇するばかりに、潜在する児童虐待を見過ごすことが深刻な事態につながりかねません。
 そこで、これまでは「虐待を受けた」児童を発見した者にすみやかな通告を義務づけていたものを、「児童虐待を受けたと思われる」児童へと範囲を広げることとしました(6条1項)。
 しかも、通告を受けた後、当該児童の安全確認を行なうに際して、必要に応じ、近隣住民や教職員・児童福祉施設の職員等の協力を得ることが新たに盛り込まれ(8条1・2項)、最も身近な目撃者である近隣住民の協力がさらに期待されています。
 なお、頻発する虐待の事例をもとに、児童虐待の定義に、次のような具体例をあげました(2条3・4項)。

児童の安全確認・確保に 警察の力を一層活用

 児童虐待のおそれがあるとき、都道府県知事は児童相談所職員などを児童の家に立ち入らせ、調査・質問することができます。その際、必要があれば警察官の援助も求めることができます。が、現実には、保護者があくまでドアを開けることを拒めば強制的に開けて入ることまではできず、警察に援助を要請することも年に100件程度にとどまり、児童の安否確認もままならないのが実情です。
 今改正では、規定を一歩進めて、児童の安全の確認・確保のために、「必要に応じ適切に」警察署長に援助を求めることを義務づけました。これを受けた署長は、すみやかに警察官を派遣して、現行法(警察官職務執行法・刑事訴訟法等)を活用してできる限りの措置をとるよう努力することとなります(10条2・3項)。
 このほかに、虐待を受けた児童を支援するための次のような措置もとくに盛り込まれています(13条の2)。

実効力を高めるための方策とは――検討を先送り

 「児童虐待防止法」は、制定から3年後をメドに見直しが予定されていたため、法改正にあたっては、当初からさまざまな要望が出されていました。たとえば、(a)立入調査の実効性をあげるため家庭裁判所の許可で強制立入できるように、あるいは、(b)裁判所で一時親権を停止させてその間に親の教育プログラム参加を義務づけ立ち直りを確保する制度の創設を、さらには、(c)親の目に余る介入を防ぐためにDV法のような接近禁止命令の制度を等々。しかしこれらはすべて見送られ、さらに3年以内に検討することと、先送りされてしまいました(附則2条)。
 また、平成17年4月からの施行がめざされていた「児童福祉法」の改正も、年金法案のあおりで継続審議となり棚上げされたままです。この中では、激増する虐待相談に対して、保護の受け皿となる児童相談所や児童福祉施設などがすでにパンク状態となっいる現状の打開策(たとえば幅広い子どもの相談の窓口を市町村に移し、相談所は虐待など困難なケースを扱う専門機関とするなど)や家庭裁判所の児童相談所への勧告制度などが導入されるはずでした。
 厚労省は、平成16年度から、虐待された子どもを個別にケアしたり、親への支援指導を強化するため、約1600人に及ぶ非常勤職員を配置することとしています。しかし、今回の法改正でどれだけ実効性があがるのか、心もとない限りです。

児童買春禁止法――罰則をさらに強化

 さて、児童の保護をめぐっては、「児童買春・児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」(児童買春禁止法くわしくはそよ風101号参照)も改正され、平成16年7月8日よりすでに施行されています。
全国検察庁での受理件数
児童買春児童ポルノ
平成11年※
平成12年 
平成13年 
平成14年 
平成15年 
  18
 570
 900
1332
1281
  27
 189
 152
 200
 273
※平成11年分は,同年11月1日児童買春禁止法が施行されて以降の件数
 この改正により、児童買春・児童ポルノについては、さらに一層きびしい罰則でのぞむこととなります。
 まず、児童買春(性交・性交類似行為又は性的好奇心を満たすため性器等に触るなどの行為)をした者は、5年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられます(4条、旧法は3年・100万円)。
 また、児童買春を斡旋・勧誘した者は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金(懲役と罰金の併科も。旧法は3年・300万円)、これを生業として行った者は、7年以下の懲役および1000万円以下の罰金に処せられます(5・6条、旧法は5年・500万円)。

たとえ無償でも……
児童ポルノの製造・供給等を処罰の対象に

 児童ポルノへの規制も、適用範囲を拡大する一方、罰則を強化しています。
 児童ポルノとは、児童買春と同様の行為のほかに、子どもを全裸・半裸などにして性欲を興奮・刺激するような描写を行っているもので、従来は写真やビデオなどに限定されていました。しかし近年、通信機器の発達により、インターネット等を利用したさまざまな犯罪が横行しています。そのため、電磁的記録による記憶媒体(CD・フロッピー・ハードディスク等々)全般を、写真に加えて、対象としました(2条3項)。さらに、こうした情報を提供する行為(たとえば、電子メール等で送信するとか、ファックスで送るなど)も、処罰の対象となります(7条)。
 とくに、有償・無償や返還の約束の有無等には一切関係なく、たとえ特定かつ少数の者であっても、提供する行為そのものが、新たに処罰の対象とされました。児童ポルノやそうした情報を提供した者、あるいはそれらを目的に児童ポルノを製造・所持・運搬・輸出入・保管した者は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金となります(7条1・2項)。
 さらに、他人に提供する目的がたとえなかったとしても、またたとえ児童の同意があったとしても、児童にそのような姿態をとらせて撮影し、児童ポルノを製造する行為そのものが規制され、同様に、3年以下の懲役または300万円以下の罰金となりました(7条3項)。
 そして、さらにそれを、不特定の者や多数の者に、提供・公然陳列した者、あるいはそれらの目的で製造・所持・運搬・輸出入・保管した者については、一層重い刑罰が課せられることとなり、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金に処せられます(両方の併科もあり。7条4〜6項。旧法では3年・300万円)。
 なお、今法の改正は、「児童売買等に関する児童の権利条約の選択議定書」「武力紛争における児童の関与に関する児童の権利条約の選択議定書」の批准に合わせて行なわれたものです。




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